こんにちは、メノーです。
医者、中でも研修医の皆さんは救急外来での仕事の一部に携わらなければならない人が多いと思います。
救急で仕事をしていると何をやっていいのかわからず思考停止してしまい、救急に苦手意識を持っている研修医に遭遇する事があります。
そういった研修医はおそらく『見逃し』の恐怖から何から何までフルコース検査してしまう傾向にあります。前いた病院では風邪っぽい患者に何も考えずに採血、胸腹部CTがまかり通っている病院もありました。(笑)
甘めに見積もって検査せず、重大な疾患を見逃すよりは良いのかもしれませんが、やはりコメディカルの方々の負担にもなりますし、なにより意味のない検査には余分な時間がかかります。
ここで『身体所見』の話になるのですが、皆さんは『身体所見』に関してどのようなイメージをお持ちですか?
『古臭い』、『時代遅れ』、『意識高い系が好きそう』なんて感じじゃないですかね(笑)
これには半分賛成で、半分反対です。
自分自身はあまり身体所見は好きではないのですが、一部の身体所見を使う事で検査を減らして、救急外来の回転率をぐっと上げる事ができる(そして空き時間ができる(笑))ので愛用しています。
今回は身体所見を利用し『検査を極力減らす』事で思考能力を鍛え、かつ救急外来の回転率を上げるコツをお話ししたいと思います。
フルコース検査しなければいけない時もあるが...
慣れてくると救急外来なんかで身体所見もろくに取らずに胸から腹までバンバンCTとって、採血フルコースしてなんか引っかかったらOKみたいな風になっちゃう人いますよね。こういう人に対して賛否はあって、内科の中だと否定的な人が多いのかなあ。
内科医やってると身体所見を宗教かよってくらい愛していてものすごく検査嫌いな人が時たまいるんですが(批判じゃないですよ(笑))
まあ絶対的に研修医の勉強の為と考えたら思考停止してフルコース検査しちゃうのは『否』なんですけど、『勉強』以前に『仕事』ですからね。円滑に救急外来をチームプレーで回す為には病歴を最低限とって検査を回すのは必要だと思ってます。
基本的に偉い先生が書いた本にはまず身体所見の重要性が記載してあり、『身体所見と病歴で70%の疾患は診断できる』なんて言う人もいるので、身体所見は確かに優れたツールなんです。
ですがこと救急においては各科の専門の先生に振り分ける必要性があって、その際にフルコース検査なしでコンサルトできない科がどの病院も1つはあるじゃないのかなあ。
研修医のコンサルトで自分の科に入院させて全く別の疾患だった...なんて事を多く経験している上級医はいくら研修医が他の疾患を疑っていなくてもコンサルをだらだら聞くより画像やラボデータを見たほうが早いですから、理解できる部分もあります。そういう科にコンサルトしそうな症例であれば許さざるを得ないとは思います。
ただこれに乗じて全例フルコース検査するのはあまりよろしくない。
そもそも時間がかかってめんどくさいです。
最低限の身体所見を取っといた方が早期決着が望める
自分自身はそこまで崇高な人間ではないので(笑)、いかに仕事をサクサク、最小限の労力で終わらせるかを考えています。
そんな自分なんですが、やっぱり身体所見便利だなあと、その有用性を認めざるを得ない時があります(笑)
検査を減らしていく方が良い、というのは勉強という観点以前に余分な時間が増えるんですよ。意識が高いとか低いとか宗教の違いとか置いといてシンプルにサクサクっと身体所見とれるようになっといた方が救急外来の回転率が高くなります。
身体所見の利点は、不要な検査を省いて身体所見で決着つく疾患は意外に多い事、検査の方向性を決めるのに最も時間のかからない方法である事を理解できるようになるとより実感できます。
具体的に3ポイントあって、
①検査するか迷った患者さんを検査せずに安心して帰せる時 ②緊急性のある疾患を瞬時に疑える時 ③原因不明な疾患を探る時 |
これらの状況で身体所見は真価を発揮します。
①だったら、
例えばめまいの患者さんで採血、頭部CT、頭部MRI~と時間のかかる検査をだらだらしている研修医がいますが、回転性のめまいであれば病歴と身体所見だけでおおよそ末梢性か中枢性かの判別はつきます。
このような患者さんが来て、末梢性めまいが疑われるのであればよっぽど検査に関してはなしで帰す事ができるでしょう。(BPPV疑いならちゃんと治療としての体操を行って下さいね。)
②で代表的なのは腹部所見でしょうか。
バイタルが崩れていて腹部の板状硬や筋性防御があれば検査の選択が変化してくる可能性があります。悠長に単純CT撮って造影CT撮ってとやっていたら命にかかわりますからね。
③の場合は不明熱ですね。頭のてっぺんからつま先まで異常所見を探して熱の原因を探していく必要があります。熱の原因がわからないのであれば肛門周囲を含めた全身の皮膚を見なければならないですし、不明熱で必ず鑑別に挙がる感染性心内膜炎の可能性を考える為にjaneway発疹やosler結節、心雑音の有無を確認しなければなりません。
ほんと身体所見のおかげで検査省けたり安心して患者さん帰せたりするんで、自分みたいにめんどくさがりだったり意識低い系の研修医こそこの辺を身に着けてサクサクっと救急外来を回した方が良いじゃないのかなあ。と思います。
まとめ
忙しい時は病歴そっちのけでぱぱっと患者さんを採血して、画像の検査してと回してしまいがちですが、現場全体のチームワークで考えた時に看護師さんや技師さんの負担も増えますし、何より余分な時間がかかるのでできるだけしなくていい検査はしないでおきたいものです。
そういった『病歴と身体所見をどこまであてにできるか』という事を考えつつ診療に臨む事で実力もついてきます。
皆さんがルーティーンでとってる身体所見も、検査や治療の方向性が変わらなかったり、あんま意味ないのもあるので一つ一つの意味を考えつつ仕事するとい良いと思います。
あとは繰り返し使用する事で自分の身体所見を信頼できるようになれば、これほど便利なツールはないですので是非マスターして下さいね。