こんにちは、メノーです。
医者という職業を選択してしまった以上、生涯勉強しなければならない事は、ほとんどの医者が自覚があるとは思います。
しかし勉強する内容を考えだしたらキリがなく、終わりが見えない為真面目な人はそれだけで落ち込んでしまう人もいるでしょう。
自分の考えとしてはある程度家庭やプライベートを考慮した際に世の中の医学知識に対して一人の人間の頭脳では限界がある為、ある程度で割り切るべきだと考えています。その割り切りに関しては具体的な指標を決めてそこに到達したら良しとしています。
今回は医者、研修医が具体的な目的意識を持つ事の重要性について、思っている事を書いていきます。
研修医2年間終わった時の勉強の『着地点』をイメージする
まずは研修医における目標設定についてです。
今研修医で働かれている先生方はハイパー病院で生活の殆どを病院で過ごしている人からゆるふわ病院で毎日定時上がり、なんて人まで様々でしょう。
人それぞれ医者になった動機は様々で、ある程度はそれぞれのしたいようにしたら良いんだと思います。ただ2年間過ごす中でおおまかな着地点のイメージができてない人が多いような気がします。
基本的に研修医はある専門科をローテートし、その科で指導医に教えを請いつつ、自分で医学書を読みつつ少しずつ一人前になるために知識を蓄えていきます。ただそれを淡々と繰り返しているだけだと必要十分な知識が身につかない可能性があります。
だからといって研修医はそもそも『必要な知識がどこまでなのか』がわからないから研修医なのであって、目標を具体的にするには限度があると思います。
研修医は自分の働いている病院での『ロールモデル』を探す
そこで、研修医はまずは『近い年次の先輩で自分の理想に近い人を探し、その人に有って自分に不足している知識を埋める作業をする』というのが一番効率が良いかなと思っています。
もし自分の病院にいなければ大学の先輩だったり、それでもいなければネットで探してみて下さい。今の時代はSNSなどで若い医師が思い思いの発言をしていたりします。
これが研究や留学を終えた部長クラスになるとまた医学に対する見方が違ってくると思うので、年次は近ければ近いほど良いでしょう。
往々にしてロールモデルとなるような医者はアウトプットが上手ですから、その人と話している中で不足している部分が浮き彫りになってくるはずです。
その作業を繰り返している内に医者の仕事の全体像が見えてきます。そうしたら次のステップに移りましょう。
『意識高い系』研修医こそ目標を見失いがち
ハイパー病院で働く研修医は、目の前に与えられた業務をこなすので精一杯ですよね。研修医1人で担当患者20人なんて病院もあると聞きました。もっと多い所もあるんでしょうね。
研修医はがむしゃらに働けというオーベンもいるでしょう。確かに圧倒的に量をこなす事が質に転化するケースが大いにありますので、体力に余裕のある人は量をこなすという選択肢を取るのはアリです。
しかし量を効率的に質に転化させるには適切なフィードバックありきです。ただただ間違ったフォームで素振りを続けてもホームランは打てるようになりません。
そんなわけで忙しい分目標を見失ってしまいひたすら仕事をこなすばかりで、2年間終わってみると意外に身についている事が少なかったなんて研修医はざらにいると思われます。
せっかく熱意をもって初期研修にハイパー病院を選択し、一生懸命仕事しているのに身についた事が少ないようでは勿体ないですよね。
結局研修医といえど立派な社会人なわけで、社会人である以上流されるままに仕事をするのでなく是非主体性を持ちましょう。
ハイパー病院ならよりロールモデルとなる医者は見つけやすいはずです。がむしゃらに動く事も大事ですが是非目標をしっかり掲げてそこまでの最短ルートを目指しましょう。
医者の『勉強熱心』レベルを5段階に分ける
医者の仕事の全体像が見えてきたら次のステップに移りましょう。
医学が日進月歩な上に、そもそものデータベースに存在する情報量が多すぎて人間一人の頭脳では処理しきれない量である事は心のどこかで誰もが気づいていると思います。かといって医者とはいえ家庭やプライベートがある為24時間勉強するわけにもいきません。
なので個々で実現可能なレベルを設定して、そこに到達する努力をするのが現実的かと思います。
例えば自分に関して言えば、常に最新の原著論文を追いかけ続けるのは無理です。現段階の若手のうちはできたとしても中堅、部長クラスになった時にそこまでのモチベーションを保つ自信はありません。
基本的に指導熱心な誰もが憧れる上級医というのは医療に人生を全振りしている事が多く、夜中まで病院に残っている姿を見かけます。そういう風になれる覚悟があればそこを目指しても良いのかもしれませんが、家庭を持ったり、親の介護が必要になったりしていく中で状況は変わっていきます。
なので自分の場合は、
『毎週のNEJMの更新くらいはチェックする、また専門の雑誌に関しては最低限目を通す』
というレベルを目指し、実践しています。
最初はがむしゃらに頑張るのも良いと思いますが、ある程度医者の仕事の全体像が見えてきた所でどのレベルを目指すのか自分で決めて自主的に目標に進んでいった方が良いと考えています。
そこで医者の『勉強熱心レベル』を5段階に分けてみました。
I:毎日論文3本くらい読んでる
II:毎週のNEJMの更新くらいはチェックしている
Ⅲ:インフルエンサーの書いた医学書の教えを信じる人
Ⅳ:自分の病院の指導医の教え(エキスパート・オピニオン)を信じる人
Ⅴ :直感型
まあ、Ⅴは論外なんですけどもたまにいるんです(笑)、Ⅳは結構いますよね。研修医の最初のうちは指導医の言うことを素直に聞いてまずⅣのレベルになれば良いと思います。
ただし、医者の世界ではエビデンスに基づいた治療が絶対標準です。
学生の時メタアナリシスが、ランダム化比較試験が~とかやりましたよね?
要するに原著論文が最も信用できるわけです。医学書の中でもその論文を何十本、何百本とまとめてあり、かつ情報の鮮度が高い医学書を参考にしている医者はある程度その段階での標準治療ができているでしょう。
昔は日本人の書いた医学書は信用ならん!と言っている医者もいましたが現在は情報の出自が明らかにされているのでそういった事も聞かれなくなってきました。
そしてその本が医者の間で『あいつの書いた本なら信用できる』と有名になってしまったインフルエンサーの著者の本だとさらに安心してついつい信用してしまうんですよね。
そういう本を読んでいる勉強熱心な研修医は『うちの病院のあの先生の言っていた事と違う...』となりⅣからⅢに移行していきます。
Ⅱでは日本語で書かれた医学書だけでは飽き足らず、現在進行形で進化している医学の最新の流れを追いたい!!という情熱に溢れた医者が毎週更新されるNEJM(医学論文界で最も権威のある雑誌の一つ)の情報をチェックしないと気が済まない...とういう状態ですね(笑)
自分も周りがⅡくらいのレベルなので頑張って追いつけるようにできる限りチェックするようにしています。
Ⅰは...変態ですね(笑)
というのは冗談ですが、ある医学書の著者が研修医自体1日3本の論文を365日欠かさず読み続けていたと噂で聞いたことがあります。本当に頭が下がりますね。自分は絶対そうはなれません(笑)
まとめると、基本的にⅢに到達するまではそこまで労力のいる作業では無いのでコツコツ目指して良いのではないかと思っています。
英語への抵抗さえなくなればⅡレベルも習慣化する事がなんとか可能ですし、まずは自分の専門領域に限って読んでみるとかで良いと思います。
おわりに
しっかりと目標設定をする事で人間の脳は最短距離でその目標を達成する為に動き始めます。それぞれ目指すべきレベルは違うと思いますが、はっきりした目標設定をして効率よく勉強していきましょう。