現役の内科医をしております。
今回は『研修医向け!画像診断おすすめ本5選』という内容でお話をしていきます。
特に研修医の皆さんにとっては、画像を読めるようになる事って必須命題ですよね。
そして医学生の時国家試験で見た1スライスを切り取った画像から、マウスをころころして胸腹部CT全体から異常をもれなく見つけ出していくという作業に変わります。
まずその作業に慣れる必要がありますよね。
研修医の皆さんにとって必要な画像診断の目標は、
①撮影した範囲に関しては全臓器確認し、ある程度異常を判断できるようルーティン化する
②各撮影パターンによって得られる情報を整理し、その時々の状況に応じて適切な選択ができるようにする
といった所ではないでしょうか。
①に関してはとにかく救急だろうが病棟だろうが『撮影した範囲はもれなくチェックする』というのは基本です。
日中の放射線科医が在駐している状況なら困ったら最悪助けを求める事もできますが、夜勤帯はなかなかそうもいかず、何人かの医者で画像とにらめっこしながら次の一手を考えていく事になります。
腹部CTを撮影してたまたま写っていた胸部の下の方に気胸があったり、偶発的な腫瘤を見逃して後日放射線科医の読影で指摘されるなんてあるあるですね。
特に腫瘤に関しては見逃すと後日家族から訴えられたなんてケースもよくニュースでみますね(今回の話と関係ないので深堀りしませんが、『リスクマネジメントを目的に心配だから画像を撮る』ってのは必ずしも賢い選択ではありません。)
勿論専門的すぎてわからない異常もありますが、きちんと全臓器確認する癖はつけましょう。
②に関しては、要するに『画像はとりゃいいってもんじゃない』って事ですね。
なんでもかんでも胸腹部CTでは芸が無いです。そして勿論被爆のリスクを患者さんに与えます。
『レントゲン』、『単純CT』、『造影CT』、『MRI』...といった撮影パターンごとにどんな情報が得られるのかを整理して、必要なものだけ撮影するようにすると良いでしょう。
また被爆のリスクは患者さんにアウトプットできるように具体的な合併症と頻度を把握しておきましょう。
画像に関してはどうせ救急で毎回読むので、さっさと早い段階で勉強してある程度のレベルまで達しておくと勝手に成長していきます。
ただ画像診断の本って、研修医向けみたいな本のパッケージしといて、各画像を細かくスライスして細かい部位の名前並べてたりとか、やたら脳腫瘍の細かい分類してたりとか、
要するにオーバーワークな本が多いんですよ。
勿論細かい部位の名前とか知ってるに越した事はないけど優先度は低いし、それを研修医向けの本で説明する必要はないと思います。
どこで役立つの?って知識は身につけなくて良いでしょう。
なので画像診断って研修医の皆さんが本探すのに一番困る分野じゃないかなって思います。
丁度良い本が少ないです。
そんな人の為に今回は部位別に、研修医にとって上で説明した2ポイントの目標を最短距離で達成する為の良書を紹介していきますので、本探しでお困りの方は是非参考にしてみて下さい。
それでは参りましょう。
また、おススメの医学書TOP100を下の記事で紹介してありますので、良かったらそちらも読んでみて下さいね。
おすすめ医学書ランキング100冊!2020年度版!【保存版・研修医もベテランも】
頭部画像:救急での頭部画像の読み方〜解剖をふまえた読影の手順からMRI適応の判断まで
頭部画像に関しては、特にオーバーワークな本が多い印象なんですが、このレジデントノートの救急での頭部画像の読み方は質・量ともにコスパ良しです。
2014年の本なんですが、画像診断に関しては治療と違ってすぐ見解が変わる事はないので古さは全く問題ないですね。
頭部CTに関しては、
✓出血や梗塞の部位・大きさ(手術適応かどうか)・発症時間の推測(MRIでADCmap やT2画像の役割の判断)を言語化して脳外科の先生にコンサルトできるようにする
✓微少なクモ膜下出血や梗塞など最も見逃しやすい部位が『脳』なので、見逃しやすいパターンはさらってストックしておく
のが大事です。きちんと画像をみて所見を言葉で言い表せるようになるのと、見逃しやすいパターンを覚えておけば良いでしょう。
その為には、まずはこの本で過不足なく研修医にとって必要な知識が得られると思います。
胸部画像:レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室
胸部画像のおススメ本は、レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室です。
この本は自分の好きなタイプの本です(笑)
何が好きかっていうと、胸部レントゲン、CTで見られる異常所見の原理原則に掘り下げて話がされているので、『この異常だからこの疾患』でなくて、『異常が成り立つ仕組み』を話してもらえるんですよね。
浸潤影、間質影があった時の病態から想起すべき疾患の鑑別や、小葉の構造を説明したのちに小葉の粒状影の分布で疾患の鑑別をしたり、
要するに一回読んだら根っこの部分から理解できるので知識が定着しやすい本なんです!
加えて文字も大きいし、なんか紙もツルツルで気持ちいいです(笑)
レントゲンに関しても陰影の見える仕組みから骨・軟部組織や縦郭陰性の見方までこと細かに解説されています。
レントゲンって一生読んでいくものなので、できるだけ完璧に読影できるようになっておきたいですよね。
『フェルソン』っていう歴史のあるアメリカのレントゲンの教科書があるんですが、だいぶオールドタイプの本で、現代人にとっては胸部画像教室の方が理解しやすい本だと思います。
腹部画像:レジデントのための腹部画像教室
腹部画像のおススメ本は、レジデントのための腹部画像教室です。
下の消化器内科の記事で、
って話をしました。
消化器内科おすすめ本TOP3!!【研修医・レジデント向け】
腹部のCTに関して言えば、わかりやすい胆嚢炎やイレウスと言ったものだけでなく、SMA塞栓や閉鎖孔ヘルニアなど、あまり出会う頻度が多くないのに緊急性を要する疾患がおなかには多いので注意が必要です。
そのコンセプトで考えると、レジデントのための腹部画像教室はまじで名著ですね。
尿路結石などの超ありふれた疾患からSMA解離などのマニアックだが緊急性の高い疾患まで広く網羅されています。
あまりオーバーワークな本は読まなくて良いと最初に話しましたが、腹部画像に関してはマニアックだろうがありふれていようが緊急性の高い疾患が目白押しなので、徹底的に勉強しておくべきでしょう。
おそらく筆者もその事を理解しているので、レジデントのためのというタイトルながら幅広い疾患を説明しているのだと思います。
ただ文章も平易ですしCT画像も多く取り入れられていて読みやすいてので、早い段階で読破して腹部疾患について『認識』できている状態を作っておきましょう。
救急CT画像:主訴から攻める! 救急画像〜内因性疾患から外傷まで、すばやく正しく、撮る・読む・動く!
救急CT画像のおススメ本は、主訴から攻める! 救急画像です。
ここまで紹介してきた本は部位別のおススメ本でしたが、この本は症状とリンクさせて画像を考える為の本です。
例えば自分達が画像をオーダーする時に、コメントを書くんですけど、もしそこに何も書かないと、読影してる側の放射線科医はめちゃくちゃ困るんですね。
なんて思ってる人がいたら今すぐ考えを改めましょう(笑)
症状や病歴と連関させてこそ画像の分析ができるんです。
放射線科医=画像だけ読んでる医者ってのは間違ってます。
そして、無駄にCTを撮りまくって読影の仕事を増やすのはやめましょう(笑)
そういった放射線科医の気持ちを考える上でもこの本は良い本です。
✓吐血に絶対CTは必要?
✓呼吸苦に絶対XPは必要?
とかっていう臨床上の疑問を解決してくれますし、
✓頸部痛の患者はどんな疾患を想起してどんな異常を画像で検索すべきか
✓熱源のわからない発熱患者で画像上注意しなければいけないのはどこか
といった症状と連関した画像の見方を学べるのでおススメです。
実用性という意味ではナンバー1の本だと思います。
救急MRI画像:「なぜ?」からはじめる救急MRI
救急MRI画像のおススメ本は、「なぜ?」からはじめる救急MRIです。
この本もやさしイイ胸部画像教室と『原理原則・本質の部分を説明している』点で似ていて、『どのような異常があるとどんなMRIの信号強度の変化があるのか』を救急でよく遭遇する脳卒中や脳梗塞を取り上げて説明している本です。
タイトルは救急MRIとされていますが、本質を説明しているので非常に汎用性の高い本だと思います。
数が少ない救急MRIの本の中でも、1番コストパフォーマンスの良い本でしょう。
まとめ
では最後に、今回紹介したおススメ本をまとめて終わりにしようと思います!
ポイント
おススメの画像診断の本!
✓頭部画像:救急での頭部画像の読み方
✓胸部画像:レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室
✓腹部画像:レジデントのための腹部画像教室
✓救急CT画像:主訴から攻める!救急画像
✓救急MRI画像:『なぜ?』から始める救急MRI
て感じです!
早めに勉強しておく事で勝手に救急で症例数が積み重なって読影できるようになるので、早めに勉強しておきましょう!
逆に、
ってめっちゃ損なので、気を付けましょう(笑)
当サイトでは、他にもおススメの医学書を紹介しておりますので是非参考にしてみて下さいね。
おすすめ医学書ランキング100冊!2020年度版!【保存版・研修医もベテランも】