現役の内科医をしております。
今回は『感染症関連のおすすめ医学書TOP3!』という内容でお話をしていきます。
皮膚科だろうが泌尿器だろうが脳だろうが人間の体の臓器はほぼ全て感染症と切っても切れない関係です。
言うまでもない事かもしれませんが、研修医はじめ医師全てに感染症の勉強は至上命題でしょう。
下の抗菌薬の記事でも書きましたが、2050年には薬剤耐性菌の問題で感染症が死因のNo1となるという予測があります。
【研修医向け】抗菌薬おすすめ本TOP3まとめ!!【はじめの一歩】
全ての医師が感染症に関する適切な知識を身に着けていかないと、恐ろしい未来を迎える結末になりかねないので徹底的に勉強しておきましょう。
こと研修医に関して感染症で身に着けておくべき目標としては、後述する本で散々されているのですが、
✓どの臓器に、どんな微生物が感染しやすく、どんな抗生剤を選択すべきなのかを知る
一言でいえばこの1点に尽きるのかなと思います。
勿論敗血症性ショックならどうするとか、耐性菌の話など勉強する事は多くありますが、この1点を念頭において普段から診療にあたっていれば感染症に関しては正確な判断ができるようになるのではないでしょうか。
感染症に関しては国家試験の単発の暗記した知識というよりは、感染症独自のロジックを理解して、脳みそに基礎体力をつけていく必要があります。
最初は理解するのに時間がかかるかもしれませんが、目の前の一人一人の患者さんを大事にして少しずつ成長していきましょう。
今回は4冊紹介します。通読して納得するものから辞書使いする本まで用途は様々ですので、状況に合わせて使ってみて下さい。
それでは参りましょう。
また、おススメの医学書TOP100を下の記事で紹介してありますので、良かったらそちらも読んでみて下さいね。
おすすめ医学書ランキング100冊!2020年度版!【保存版・研修医もベテランも】
1位:IDATEN執筆本(市中感染症診療の考え方と進め方+病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方)
1位:IDATEN執筆本(市中感染症診療の考え方と進め方+病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方)
感染症のおすすめ医学書第1位は『市中感染症診療の考え方と進め方』、『病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方』です。
この本はIDATEN監修で制作された本です。
って人、是非この機会に覚えておきましょう。
IDATENは日本感染症教育研究会の事で、感染症内科医の精鋭が結集して、日本の医療の教育の為に色んな活動を行っている集団の事なんです。
各地域でケースカンファレンスも行ってますし、何よりおススメしたいのがIDATENのメールマガジンに登録する事です。
感染症界隈の最新の情勢や、為になる情報を発信してくれているので超有益ですね。
メルマガに登録しておくだけで進歩する感染症治療に出遅れる事を防ぐ事ができます。
リンク先から登録できるので是非登録しておきましょう。
話がそれましたが、そんなIDATENの精鋭が執筆した本なので内容もさる事ながらわかりやすさにも定評があります。
『市中感染症診療の考え方と進め方』では、上で研修医の目標に上げた
『どの臓器に、どの微生物が感染していて、どんな抗生剤を使用するか』
という感染症治療の超本筋ともいえる内容を理解できる本です。
具体的には上気道、肺、腸など臓器別に章に分けてカテゴライズし、各臓器ごとの感染症の特徴・治療方針を説明してあります。
また致死的感染症、海外渡航歴のある人の感染症などへの言及があり、1冊読むだけで市中感染症の概要を理解する事ができるでしょう。
まず感染症診療の『型』を学ぶという意味で最も適切な本なので1位にさせてもらいました。
また市中感染症の理解が深まったら、市中の反対は院内感染ですね。
院内感染の勉強についてもIDATENの名著、『病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方』をおすすめしておきます。
当然免疫不全の患者さんは普通の人より免疫力がないので感染症に罹患しやすいですし、入院中の患者さんも弱った状態なのでそれに準じます。
そして入院中は人工呼吸器、点滴、尿道カテーテルなど『異物が』体に装着されていたり、はたまたお腹を開けて手術を行ったり...どう考えても普段とは『違う』状態なんです。
そんな院内感染や免疫不全の患者さんと向き合った時、市中感染症とは対応が『違う』シーンが非常に多いのは当然で、院内感染用の勉強は必須です。
このIDATENの本ではデバイスのついた患者さんの感染症、またステロイドが投与されていたり、肝硬変や腎不全、脾摘後など免疫力の低下した患者さんの感染症についての治療を詳説しあります。
市中感染症・また感染症の本筋についてある程度理解した人は次に読んでみると更に自分の中の感染症の世界観を広げる事ができるのでおすすめです。
2位:レジデントのための感染症診療マニュアル
2位:レジデントのための感染症診療マニュアル
感染症のおすすめ医学書第2位は『レジデントのための感染症診療マニュアル』です。
いわずとしれた青木眞先生の名著ですね。
とてもボリュームが多いので当然辞書的に使用する本ではあるのですが、必ず第1章は通読しておきましょう。
✓発熱・CRP・白血球は感染症診療に役立たない!
などといった刺激的で、かつ本質的な内容が書かれているので、もしかたらあっと驚く事実と出会うかもしれません。
第1章を読んだら、その後のおすすめの使用法としては出会った感染症の患者さんに応じて読み進めていくと記憶にも残りやすいしコスパが良いと思います。
例えば胆嚢炎の患者さんが担当になったら胆嚢炎の項目を読む、黄色ブドウ球菌菌血症の患者さんに出会ったらブドウ球菌の範囲をしっかり理解する...といった具合です。
そうやって出会った患者さん1人1人を復習していくうちに力がついていくと思いますので、手間を惜しまず感染症診療マニュアルを読み込んであげて下さい。
少し高い本ではありますが、『レジデントのための』と言うにはカバーしている範囲が広く、そして知識も深い所まで話されているので研修医以降も余裕で使えます。
そういった意味ではコスパは悪くない本だと思います。
3位:感染症診療のロジック
3位:感染症診療のロジック
感染症のおすすめ医学書第3位は『感染症診療のロジック』です。
著者の大曲先生は感染症業界では非常に信頼の厚い人です。
この本は簡単に言えば題名の通り、『感染症を診断・治療していく際にどういった脳みその動かし方をして進めていくのか』を言語化した本ですね。
具体的には、
✓抗生剤を『あえて使用しない』タイミングとは?
✓抗生剤を使用しても状況が良くならない時に考える事は?
✓リンパ節が腫れている時に想起すべき事は?
と言った日常の臨床疑問に沿って、疑問を解消しながらきめ細かい感染症診療ができるようになれるようになっています。
少し発刊が古く、治療が現在はアップデートされている部分がありますが、この本では感染症診療での本質的なロジック・頭の使い方を学ぶ本なので十分読む価値があると考えおススメさせてもらいました。
この本を読んで感染症内科医の頭の動かし方を模倣していきましょう。
まとめ
では最後に今回紹介したおすすめ本のまとめをして終わりにしたいと思います。
ポイント
✓1位:IDATEN執筆本(市中感染症診療の考え方と進め方+病院内/免疫不全関連感染症診療の考え方と進め方)は感染症最強集団IDATENが初学者の為に感染症のいろはを語った必読書!
✓2位:レジデントのための感染症診療マニュアルは感染症のバイブル辞書として使用してください!困った事があれば大体この本に書いてあるので、担当の患者さんの感染症の予習・復習に使いましょう!
✓3位:感染診療のロジックは感染症内科医の頭の中が追体験できる本!再現性の高いロジックを学びましょう!
てな感じになります。
この4冊読めばいわば『感染症ロジック脳』を完成させられると思うので、地道に取り組んでいってみて下さい。
当サイトでは、他にもおススメの医学書を紹介しておりますので是非参考にしてみて下さいね。
おすすめ医学書ランキング100冊!2020年度版!【保存版・研修医もベテランも】