こんにちは、メノーです。
突然ですが、研修医の方々にとって,
『身体所見』
とは最もふわっとしていて、不明瞭な概念なのではないでしょうか?
やはり『採血結果』や『画像所見』といった、目に見えて、数値化できるものの方が安心感があると言う人は多いです。
そして身体所見は『施行者によって上手下手が分かれる』側面もあり、始めたての頃は自分の身体所見に自信が持てない時期が続くでしょう。
でもそれは正しい感覚なので大事にして下さい。
しかし身体所見も、自信をもってとれるようになれればこれほど有用なものはありません。
最初は自分も『古臭くて時代遅れだし画像検査した方が早いやん』と思っていたのですが、結局研究の中で身体所見の有用性は既に証明されているのです。
検査の有用性を示す統計学の言葉で『陽性尤度比』というものがありますが、数々の研究の結果、身体所見の中でこの陽性尤度比が高いものが多く、診断に寄与する場面がとても多いのが現状です。
陽性尤度比の使い方に関してはこちらの記事で紹介してあります。
医者・研修医の仕事効率化|確率を用いて『数学的に』診察する方法
まずは、とりあえず身体所見は使えるって事は把握しておいて下さい。
では、例えば画像の検査も、採血の検査もできない病院で働いたと仮定します。
もしそういう環境であれば身体所見だけで診断に近づいていく努力をしなければなりませんね。
...まあ研修病院でそんな病院はないでしょうが、一度そういう環境だと思い込んで診断しようとしてみて下さい。
というよりは、クイズ感覚でも良いので普段の診察でもある程度病歴と身体所見だけで『この病気かな?』とあたりをつける癖をつけると良いと思います。
画像検査すればはっきり『ここに異常がある』で済んでしまう話を、
最初のうちは暗闇の中、懐中電灯で照らしながらトンネルを進んでいくような感覚に陥ると思います。
もちろん今の時代はCTやMRIで内部を確認できるので、無理に身体所見だけで診断をつけにいく必要はないですが、一つ強力な武器となるので身につけておいた方が良いでしょう。
そこで研修医が読むべき身体所見の本を2つだけ紹介します。
身体所見も当たり前に日常の診察で使う分野なので早めの勉強をおススメします。
ちなみに身体所見の有用性についてはこの記事に記載しております。
身体所見は時代遅れ?身体所見をとる意味とは?
①高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス
まずは上田剛士先生という方が書かれたこの本です。
身体所見の本で最も研修医の先生方にお勧めしたいのはこの本です。まずこの一冊だけで構わないと思います。
何が良いかと言うと、症候毎に必要な身体所見をまとめてあり、かつたっぷりと元となるエビデンスが記載されているのです。
頭からつま先まで身体所見の羅列をしてある本もあり、そういう本を通読する事も大事だと思うのですが、まず実戦で生かせるのはこの本でしょう。
研修医の皆さんはすぐ知識を使いたいでしょうしね。
詳しい説明は省きますが、例えば肺炎という病気は実はレントゲンに写らない時があるのですが、その際聴診所見で肺炎の診断に近づける場合があります。
こういった風に、結局画像と採血だけでは済まない部分について有用な身体所見は多く存在するので、是非一読して下さい。
②Evidence-Based Physical Diagnosis
その筋では有名な先生なのですが、Steven Mcgeeという先生が執筆された大変有名な書籍です。
上田先生の本が実際に仕事をする中に合わせて使いやすいのに対して、マクギー先生の本は『頭からつま先』までの身体所見の取り方に関して詳細に記載されています。
そしてこの本もたっぷり元となる論文が記載されており、かつ身体所見毎の陽性尤度比が示されているので『有用度合い』が数値化されておりとても使いやすい一冊となっております。
ちなみにこの本についてですが、抵抗もある人も多いかと思いますが、
どうせなら英語版で読んだ方が良いと思います。
当然日本語で読んだ方がスムーズに読める人が多いです。
それはそうなんですけど、英語がかなり平易な言葉で書かれているので、英語に慣れる作業を兼ねてと考えると悪い選択ではないだろうと思います。
話はそれますが、『医者に英語学習は必要か』という話題になった時、自分は『必要』だと思っています。
時たま、『どうせAIが発展して勝手に翻訳できるようになるから、勉強しなくていいじゃん』みたいな意見を耳にする事があります。
たしかに2019年3月、今現在の段階でGoogle翻訳に英文を入力するだけでわりと自然な形で翻訳されるようにはなってきました。
ただし、仮に技術が発展したとしても、自分達の生活にいつから浸透してくるかは誰にも予想できないのが現状ではないでしょうか?
自分の考えでは、近い将来翻訳機械の発展で英語学習が不要になる可能性もあれば、そうではない可能性もあり『どうなるかわからないし、少なくとも自分が医師として最もアクティブに働く期間にその技術が浸透する保証はどこにもない』という解が正解だと思っています。
そういう状況の中で翻訳機械の発展に期待して英語学習を捨てるのはややリスクを伴う選択だと思っています。
なので、やや話がそれてしまいましたが(笑)
自分としてはこの本をきっかけに英語に触れてみる事をおススメさせて頂きます。
必ずしも通読しなくて良いので、例えば神経診察とか可能な範囲で良いので、部分部分でも読める本になっておりますので是非購入してみて下さい!!
おわりに
当サイトでは、他にもおススメの医学書を紹介しておりますので是非参考にしてみて下さいね。
おすすめ医学書ランキング100冊【保存版・研修医もベテランも】